マルタイの女
★★★★★
三月に日本映画専門チャンネルにて伊丹十三特集を行っていて、毎週日曜日に伊丹監督の作品を二本ずつ放送している。そんな中初めてちゃんと最初から最後まで通して見ることができた本作「マルタイの女」。
伊丹監督の映画がこんなに面白いとは思ってなかった。というのも、子供の頃にテレビで放映したのを何度か見た記憶はあったが、ヤクザや暴力団が出てきて生臭い感じがしてあまり良いイメージを持っていなかった。
ところがすっとこどっこい、大人になった今では面白い。面白いどころか、物足りなさすら感じてしまった。
本作については説明するのもおこがましいが、偶然殺人事件を目撃してしまった大女優・磯野ビワコが、裁判の証人として証言台に立つまでのドタバタ劇。
殺人事件はカルト教団によって弁護士夫婦が殺害されるというもので、この映画の公開が1997年ということを考えるとよくもここまで直球の設定を設けたものだと感心させられる。他にもどこぞで聞いたことのある台詞が出てくる。
最近の映画はどちらかと言えばストーリーをより難解にし、制作者の意図を直接分からないようにしている作品が多いように思う。しかしそういった映画は、後でその意図に気付いたときにどこか「イヤらしさ」を感じてしまうことがある。
しかし伊丹映画にはそれがなく、この清々しいほどの直球具合が伊丹映画の面白さの1つだろう。見ていて「イヤらしさ」を感じない。
また、いくら直球とは言え、「グロさ」まではなく、あくまで映画として楽しめる範囲にとどめてある。この辺が冒頭に書いた物足りなさにも繋がっているのかもしれないが、これくらいがちょうど良いように思う。
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