なにとはなく

日々の点描や、映画の感想などを・・・

CLOUD ATLAS/クラウドアトラス

★★★★★

手塚治虫火の鳥を彷彿とさせる、人間の輪廻転生を描いたウォシャウスキ兄弟監督の作品。

172分の長編にもかかわらず、ダレることは一切なく6つの時代を行ったり来たりしながら、最後まで物語は一気に進む。

f:id:bttf1981:20121026181605j:plain

6つの時代と背景は、

1849年、大西洋を航海する商船上での白人弁護士と奴隷の出会い

1931年、本映画のタイトルを冠するクラウドアトラス六重奏の作曲秘話

1973年、石油企業の陰謀に立ち向かう科学者とジャーナリスト

2012年、老人ホームに半監禁された老編集者

2144年、クローンを労働力として製造する社会ネオソウル

2321年、文明が崩壊し、人類が滅びゆく世界

と、書いただけでは何のつながりも関係性も無いが、同じ俳優がそれぞれの時代で異なった役柄を演じながらも、別の時代との関連性を暗示させるストーリーとなっており、見ていて違和感がまるで無かった。

 

(ただし、ネオソウルでの変な特殊メイクは、アジア人に見せるためなのか何なのか分からないが、ぱっと見て誰がどの俳優かいまいち分かりにくかった)

 

また、一つ一つのシーンは長くて数分しか無く細切れだが、前後する時代のストーリーと役柄とが絶妙に絡みながら進むので見ていて気持ちがよい。

 

 

この映画の主題は自由なのだろう。

どの時代の主人公も、目に見えない薄暗い悪と戦っている。それはその時代においては、はっきり悪とは見えづらく自らも受け入れてしまいそうな程の薄暗さなのだが、自分の自由意志を信じ戦っていく。

基本的にはどのストーリーも、ハッピーエンドとまでは行かないが前向きな終幕を迎える。しかしその過程で時には悪に身を投じたり、志半ばで倒れたりもする。主演のトム・ハンクスも自己中心的で金の亡者のような役が多く、6つ目の人生でも最後の最後まで自分の欲望に葛藤し苦しむ。

それが故に、自由を勝ち取るラストはとても気持ちのよいものだった。

 

 

 

ちなみに6つの時代を通じて常に悪を演じていた二人、ヒューゴ・ウィービングヒュー・グラントがなかなか印象的だった。ヒューゴ・ウィービングはウォシャウスキ監督というだけあって、自由を求める者を追いつめるその姿はエージェント・スミスそのものだし、ヒュー・グラントは薄気味悪い悪役を好演していて割と悪役も似合うなと思った。(ポスターを見る限り、どう見ても善人役にしか見えないのに)

 

クラウド アトラス ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産) [Blu-ray]

クラウド アトラス ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産) [Blu-ray]